ROAS(ロアス)とは?ROIとの違いや計算方法をわかりやすく解説!
2025.08.25
Web広告の運用において、費用対効果を正確に把握することは重要です。
その費用対効果を測る指標の一つにROASがあります。
一方、ROASと似た指標にROIがあったりと混同されがちなため、注意が必要です。
この記事では、ROASの意味や計算方法、そしてROIとの違いなどを、わかりやすく解説していきます。
INDEX
ROASの意味
ROASは「Return On Advertising Spend」の頭文字をとった略語で、日本語では「広告の費用対効果」という意味を持ちます。
これは、投じた広告費に対して、どれだけの売上が得られたかを示す指標の一つです。
読み方は「ロアス」で、それらROASの数値が高いほど、広告運用が効率的であると評価されます。
広告の売上への貢献度を数値化できるため、広告戦略の評価や改善にも役立つ指標です。
インターネット広告をはじめとする多様な広告手法が混在する現在では、各広告効果を比較するニーズが高まり、ROASの重要性も増していると言えるでしょう。
ROASの計算方法を具体例を交えて紹介
ROASは、広告の売上貢献度を測る上で重要な指標です。
ここでは、ROASの算出方法を具体例を交えて紹介します。
ROASを算出するための基本的な計算式
ROASを算出するための基本的な計算式は、以下の通りです。
- 広告経由の売上÷広告費用×100(%)
この単位は主にパーセント(%)で表されます。
例えば、広告費に50万円を投じ、その広告経由で300万円の売上があった場合、ROASは300万円÷50万円×100=600%となる具合です。
なお、ROASが100%を超える場合は、広告費を上回る売上が発生していることを示し、数値が高いほど広告運用が効率的であると判断できます。
事業の採算ラインとなる損益分岐点の求め方
事業の採算ライン、すなわち損益分岐点となるROASは、広告費に対して売上が利益ゼロになる状態を示します。
これを算出する計算式は、以下の通りです。
- 顧客単価÷(顧客単価-原価)×100(%)
例えば、商品1つの販売価格が10,000円で、利益率が20%(原価が8,000円)の場合、損益分岐点ROASは「10,000円÷(10,000円-8,000円)×100=500%」となります。
つまり、その場合、広告費用に対して5倍の売上を達成しなければ利益は発生せず、損益分岐点に達しないということになるのです。
なお、損益分岐点となるROASを理解することで、広告運用において「どれだけの売上を達成すれば赤字を回避できるか」を明確に把握し、利益率やコスト構造を考慮した適切な広告戦略を立てることが可能になるでしょう。
ROASと混同しやすい他の広告効果指標
Web広告の費用対効果を測る指標には、ROAS以外の広告効果指標を知っておくべきです。
ここでは、ROASと混合しやすい他の広告効果指標について詳しく解説します。
利益率を測る「ROI(投資収益率)」との相違点
ROI(Return On Investment:投資収益率)は、投資した金額に対してどれだけの利益を得られたかをパーセントで算出する指標です。
ROASとROIの違いは、ROASが売上を基に計算されるのに対し、ROIは利益を基に計算される点にあります。
ROIの計算式は、以下の通りです。
- (売上-売上原価-広告費以外の総費用)÷投資額×100%
例えば、広告費50万円で売上100万円、売上原価が30万円、その他の費用が10万円だった場合、利益は100万円-30万円-10万円=60万円となり、ROIは60万円÷50万円×100=120%となります。
ROASは売上高で比較できるため広告媒体ごとの比較が容易ですが、ROIは広告以外のコストも考慮した利益ベースで評価するため、事業全体の収益性をより正確に把握するのに適しています。
売上が計上されていても、原価やその他の費用が高く利益が生まれていないケースも考えられるため、広告全体の効果を測るにはROIも併用することが重要です。
顧客獲得単価を示す「CPA(コンバージョン単価)」との相違点
CPA(CostPerAcquisition,CostPerAction:顧客獲得単価)は、1件のコンバージョンを獲得するためにかかった広告費を示す指標です。
計算式は「広告費用÷コンバージョン数」で、数値が低いほど広告効果が高いと判断されます。
ROASが売上を成果とするのに対し、CPAは商品の購入や資料請求、問い合わせなど、金銭以外のコンバージョンも成果として測定できる点が特徴です。
例えば、広告費50万円で500件の資料請求があった場合、CPAは「50万円÷500件=1,000円」となります。
ROASやROIが売上や利益の回収率を測るのに対し、CPAはコンバージョン1件あたりの費用を算出するため、それぞれの目的に合わせて適切な指標を用いることが重要となるでしょう。
各指標の役割を理解して適切に使い分ける
ROAS、ROI、CPAはそれぞれ異なる視点から広告の費用対効果を評価する指標です。
以下の3つは、適切に使い分けることが必要となります。
- ROAS
広告の直接的な収益性、つまり広告費に対する売上の割合を示すもの - ROI
より広範に、全体の投資に対する利益率を評価し、投じた資本がどれだけの利益を生み出したかを示すもの - CPA
新規顧客獲得の効率性を測る指標で、顧客獲得にかかったコストを評価するもの
以上の3つの指標はどれか一つが優れているのではなく、目的や状況に応じて使い分けることが求められるでしょう。
例えば、特定の広告キャンペーンの売上貢献度を比較したい場合はROASが効果的であり、事業全体の収益性を評価したい場合はROIが有効です。
また、コンバージョン単価を最適化したい場合はCPAが役立ちます。
上記の指標を複合的に活用することで、より多角的に広告効果を分析し、精度の高いマーケティング戦略を立案することが可能となるでしょう。
広告運用においてROASを指標にするメリット
広告運用においてROASを指標とすることには、いくつかの重要なメリットがあります。
- 運用中のキャンペーンの売上への貢献度を数値で明確に評価・分析できる
⇒ROASが高いほど広告の投資利益率や収益性が良いと示されるため、目標に合わせ、ROASの高い広告に予算を増やすことで効率的な広告運用が可能となる
⇒例えば、検索広告やSNS広告など、異なる広告媒体ごとのROASを比較し、成果の良い施策に予算を集中させるといった戦略が取れる
⇒結果的に限りある広告予算を最大限に活用し、無駄なコストを削減しながら、費用対効果の高い広告に投資を集中させることができる - 比較的簡単に計算でき、売上ベースで広告効果を把握できる
- 迅速な意思決定にもつながりやすい
ROASを指標にすると、上記のようなメリットを得ることが可能です。
広告運用でROASを指標にする際の注意点
広告運用においてROASを指標にする場合、いくつかの注意点が存在します。
最も重要なのは、ROASが売上をベースに算出される指標であるため、たとえROASが低い状態ではなく、数値が100%を超えていても、必ずしも利益が出ているとは限らない点です。
また、売上から売上原価やその他の経費を差し引いた結果、実際には赤字になっているケースも考えられます。
例えば、高額な商品を販売してROASが高く見えても、原価率が非常に高い場合は利益がほとんど残らないこともあるわけです。
ゆえに、ROASだけで広告効果を判断するのではなく、利益率を考慮したROIや、顧客獲得単価を示すCPAなど、他の指標と組み合わせて多角的に分析することが重要です。
なお、ROASは短期的な売上貢献度を測るには適していますが、ブランディングや顧客育成といった長期的な視点での広告効果には向いていない側面にも注意が必要となります。
ROASの目標値はどのくらいに設定すれば良い?
ROASの目標値設定は、ビジネスモデルや業界、利益率によって異なります。
一般的に、損益分岐点を考慮した上で目標ROASを設定することが重要です。
損益分岐点ROASとは、広告費に対して売上が利益ゼロとなる状態を示す値で、これ以下のROASでは赤字になるのが一般的です。
例えば、売上原価が販売価格の50%を占める場合、損益分岐点ROASは200%になります(売上100円に対し、原価50円がかかり、残りの50円で広告費を賄う必要があるため)。
多くのECサイトでは300%以上、BtoBサービスでは400%〜600%以上がROASの目安として挙げられることがあります。
一方、上記はあくまで一般的な目安であり、自社の具体的な利益率、固定費、事業目標などを詳細に分析した上で、現実的かつ達成可能な目標値を設定することが不可欠です。
なお、目標ROASを高く設定しすぎると機会損失につながる可能性もあるため、利益を確保しつつ、適切な投資が行えるバランスを見極める必要があるでしょう。
ROASの数値を改善するための具体的な5つの施策
ROASの数値を改善し、より効果的な広告運用を目指すためには、様々な広告施策を複合的に実施することが重要です。
ここでは、ROASの数値を改善するための具体的な5つの施策について詳しく解説します。
広告を配信するメディアを再検討する
ROASの数値を改善するためには、現在広告を配信しているメディアが、自社の商品やサービスのターゲット層に適切にリーチできているかを再検討することが重要です。
例えば、Google広告やYahoo!広告などの検索広告は顕在層に、FacebookやInstagramなどのSNS広告は潜在層にアプローチするのに適しています。
ROASが低い場合、広告媒体の閲覧ユーザーと自社ターゲットが合致していない可能性も考えられるため、各媒体の特性やユーザー層を分析し、最も費用対効果の高い媒体へ予算を適切に配分するなど、いくつかの方法を試してみるのが良いでしょう。
広告コンテンツやテキストを最適化する
広告のコンテンツやテキストの最適化は、ROAS改善に直結する重要な施策です。
魅力的なコンテンツとターゲットユーザーの心に響くテキストを作成することで、クリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)の向上が期待できます。
具体的には、商品やサービスの魅力が伝わる画像や動画の選定、ターゲットのニーズに合致したキャッチコピーや説明文の作成が挙げられます。
また、A/Bテストを繰り返し実施し、どのコンテンツやテキストが最も効果的であるかを検証することも、効果の最大化には必要不可欠です。
広告のターゲット設定をより詳細に行う
広告のターゲット設定をより詳細に行うことは、ROAS改善に欠かせません。
ターゲットを絞り込むことで、無駄な広告費の支出を抑え、コンバージョンにつながりやすいユーザーに効率的にアプローチできます。
具体的には、年齢、性別、地域、興味・関心、行動履歴などのデモグラフィック情報やサイコグラフィック情報を活用し、自社の商品・サービスのペルソナ像を明確に設定することが重要です。
また、既存顧客のデータやウェブサイトのアクセス解析データなどを活用して、より精度の高いターゲティングを行うことで、広告の費用対効果を高めることが可能となるでしょう。
コンバージョンにつながるランディングページを整備する
広告からの流入を最大限に活かし、コンバージョンにつなげるためには、ランディングページ(LP)の整備が必要不可欠です。
どんなに優れた広告であっても、LPの内容がユーザーの期待に応えていなかったり、使いにくかったりすれば、コンバージョンには至りません。
LPの最適化(LPO)は、訪問者がスムーズに目的を達成できるよう、情報設計、UI/UX、フォームの改善など多岐にわたります。
具体的には、広告からの遷移先のページが広告の内容と関連性が高いか、ユーザーが意思決定するために十分な情報が分かりやすく提示されているか、購入や問い合わせまでの導線が明確であるかなどを確認し、改善していくことが重要です。
他の施策と同時進行で、魅力的なLP作成に着手することをおすすめします。
購入単価を上げるための工夫を凝らす
ROASを改善するには、広告費を削減するだけでなく、顧客一人あたりの購入単価を上げることも有効な施策です。
購入単価が上がれば、同じ広告費でより多くの売上を得られるため、ROASの向上につながります。
具体的な施策としては、関連商品のレコメンド表示、セット販売やアップセル・クロスセルの提案、送料無料ラインの設定によるまとめ買いの促進などが挙げられるでよう。
また、高単価商品の広告を強化したり、顧客ロイヤルティを高めてリピート購入を促したりすることも、長期的なROAS改善に貢献するでしょう。
まとめ
ROASは、Web広告の費用対効果を測る上で非常に重要な指標です。
広告費に対してどれだけの売上があったかを数値で可視化することで、どの広告が売上に貢献しているかを把握し、効率的な広告運用に役立てることができます。
ROASの算出は「広告経由の売上÷広告費用×100(%)」とシンプルですが、利益を考慮するROIや顧客獲得単価を示すCPAなど、他の指標と組み合わせて多角的に分析することが重要といえるでしょう。
まずは本記事で解説したROASのメリット・デメリット、計算方法、そして改善策を理解し、適切に活用しながらWeb広告運用の成果を最大化し、ビジネスの成長へとつなげていきましょう。
