LTV(顧客生涯価値)とは?重要な理由と計算方法や向上施策を分かりやすく解説
2025.08.25
LTV(顧客生涯価値)は、顧客が企業にもたらす利益の総額を示す重要な指標です。
これは単なる売上だけでなく、顧客との長期的な関係性から生まれる価値を測るもので、LTVの向上は企業の持続的な成長に欠かせません。
そこで、当記事ではLTVの基本的な意味から、具体的なLTVの計算方法、そしてLTVを高めるための戦略や効果的な施策までを詳しく解説します。
INDEX
LTVの基本的な意味
LTVはLifeTimeValueの略称であり、日本語では顧客生涯価値を意味します。
これは、顧客が特定の企業やブランドと取引を始めてから関係が終了するまでの期間に、その企業にもたらす利益の総額を示す指標です。
例えば、顧客が1回の取引で終わるのではなく、繰り返し商品を購入したり、サービスを継続利用したりすることで、LTVの値は高まります。
つまり、LTVの意味するところは、単発の売上ではなく、顧客との長期的な関係性から生まれる総体的な価値なのです。
上記の定義を理解することは、LTVを正しく活用する上で必要不可欠と言えるでしょう。
LTVが現代のマーケティングで重要視される3つの背景
次に、LTVが現代のマーケティングで重要視される3つの背景について見ていきましょう。
新規顧客の獲得コストが高騰しているため
現代の市場は飽和状態にあり、少子高齢化による人口減少も相まって、新規顧客の獲得はますます高いコストと労力を要するようになっています。
現に、新規顧客を獲得するためのコストは、既存顧客を維持するコストの約5倍かかるとも言われています。
このように新規顧客獲得のハードルが高まっているため、企業は既存顧客との関係性を強化し、顧客から長期的な利益を得るLTVの向上に注力することが求められているのです。
具体的に、低コストで効率的に収益性を改善するためには、既存顧客の継続購入や、アップセル・クロスセルを促すことが重要です。
サブスクリプションモデルのビジネスが増加したため
近年、従来の買い切り型ではなく、月額や年額でサービスを利用するサブスクリプション型のビジネスモデルが増加傾向です。
このビジネスモデルでは、顧客に継続的にサービスを利用してもらうことで利益が生まれるため、顧客満足度やロイヤリティを高める施策が成功の鍵となるでしょう。
LTVは、そうしたサブスクリプションビジネスにおいて収益性を測る指標として特に重要視されており、顧客がサービスを長く継続してくれるほど、LTVが高まります。
顧客一人ひとりに合わせたアプローチが主流になったため
デジタル技術の進化により、顧客の詳細なデータを収集・分析できるようになりました。
これにより、企業は顧客の嗜好や購買行動に合わせてパーソナライズされたマーケティング戦略を展開する、One to Oneマーケティングが主流となっています。
実際に顧客データを活用し、顧客に最適な提案を行うことで顧客満足度を高め、長期的な関係性を築くことがLTVを高める上で重要です。
まさにLTVは、顧客とのエンゲージメントを深め、その顧客が企業にもたらす価値を最大化する戦略の中心的な指標といえるでしょう。
LTVの計算方法を目的別に紹介
LTVの計算方法は、ビジネスモデルや算出する目的によって異なりますが、適切に理解して自社の状況に合わせて算出することで、経営判断やマーケティング戦略の構築が可能です。
ここでは、LTVの計算方法を目的別に紹介します。
基本的なLTVの計算式
LTVの最も基本的な計算方法は、以下の要素を掛け合わせることで算出できます。
- LTV=平均顧客単価×平均購入頻度×平均継続期間
例えば、平均顧客単価が5,000円、平均購入頻度が月に1回、平均継続期間が2年(24ヶ月)の場合、LTVは5,000円×1回/月×24ヶ月=120,000円となります。
なお、この計算方法では顧客が企業にもたらす売上の合計をシンプルに捉えることが可能で、リピート購入が期待される商品やサービスに適用しやすいです。
全体のLTVを把握するだけでなく、カテゴリーごとや商品ごとでLTVを計算することも可能なため、積極的に活用したいところです。
利益を考慮したLTVの計算式
より正確なLTVの計算方法として、利益率を考慮した式があります。
- LTV=平均顧客単価×粗利率×購買頻度×継続期間
例えば、平均顧客単価が15,000円、利益率が30%、年間購買頻度が4回、継続期間が4年の場合、LTVは15,000円×0.3×4回×4年=72,000円となります。
なお、この計算方法では売上だけでなく、実際に企業に残る利益ベースでの顧客価値を評価できるため、収益性をより重視したLTVの算出におすすめです。
粗利率を加味することで、顧客から得られる真の利益を把握し、より実態に即した経営判断も可能です。
顧客獲得コストを反映させたLTVの計算式
LTVをさらに実用的に評価するためには、顧客を獲得・維持するためにかかったコストを考慮することが重要です。
この計算方法により、投資対効果を明確にできます。
- LTV=(平均顧客単価×粗利率×購買頻度×継続期間)-(新規顧客獲得コスト+顧客維持コスト)
例えば、前の例で算出したLTVが600万円で、新規顧客獲得コストが300万円、既存顧客維持コストが100万円の場合、最終的なLTVは600万円-(300万円+100万円)=200万円となります。
なお、LTVの計算方法にコストを含めることで、顧客一人あたりの純粋な利益貢献度を把握でき、どこまでコストをかけて顧客を獲得・維持すべきかという判断基準も得ることが可能です。
解約率から算出するLTVの計算式
サブスクリプション型のビジネスモデルでは、顧客の離脱率であるチャーンレートを用いてLTVを算出する方法が一般的です。
その計算方法は、顧客がサービスを継続する期間を予測し、一定期間に得られる収益を見積もるために利用されます。
- LTV=顧客の平均単価÷チャーンレート(解約率)
例えば、SaaSビジネスで平均ユーザー単価(ARPU)が5,000円で、チャーンレートが10%の場合、LTVは5,000円÷0.1=50,000円と算出されます。
チャーンレートは、特定の期間内の解約数をその期間前までの顧客数で割ることで算出でき、LTVを正確に把握するためには、この離脱率を正確に測定することが不可欠です。
解約率を下げることは、LTVを高める上で非常に重要であり、チャーンが低いほど継続期間が長期化し、LTVも高まると言えるでしょう。
LTVと併せて理解したい5つの重要指標
LTVを正確に評価し、効果的なマーケティング戦略を立案するためには、LTVだけでなく、関連する複数の重要指標を理解することが不可欠です。
ここからは、LTVと併せて理解したい5つの重要指標について詳しく解説します。
顧客あたりの平均収益を示す「ARPA」
ARPA(AverageRevenuePerAccount)は「顧客あたりの平均収益」を示す指標です。
ARPAが高いほど、顧客一人から得られる収益が多くなるため、LTVも増加します。
ARPAは、特定の期間における総収益を顧客数で割ることで算出され、平均売上高を把握することで顧客単価の引き上げやアップセル・クロスセルの機会を特定するのに役立ちます。
また、顧客をセグメント化し、ARPAが高いセグメントに対して重点的にアプローチすることでLTVの向上につなげることが可能です。
顧客獲得単価を示す「CAC」
CAC(CustomerAcquisitionCost)は「顧客獲得単価」を意味し、顧客一人を獲得するためにかかったすべての費用を示す指標です。
広告費やセミナー運営費、ウェブサイト制作費、営業部門の活動費や人件費など、顧客獲得に要したすべてのコストが含まれます。
なお、CACは顧客獲得に要したコストを新規顧客獲得数で割ることで算出できます。
一単位あたりのコストを把握することは、費用対効果の高い顧客獲得チャネルを特定し、マーケティング活動が適正なコストで行われているかを測る上で非常に重要です。
CACが高いと顧客を獲得するコストが高いことを示し、収益性が悪いと判断される場合があるため、見逃せません。
見込み顧客の質を測る「MQL」
MQL(Marketing Qualified Lead)は、マーケティング活動によって獲得された見込み顧客の中でも、特に購入意欲が高いと判断された顧客を指します。
単なるリード数ではなく、質を測る指標として重要です。
MQLの定義は企業やビジネスモデルによって異なりますが、ウェブサイトでの特定の行動(資料ダウンロード、ウェビナー参加など)や、メールの開封率、クリック率などに基づいてスコアリングされるのが一般的です。
質の高いMQLを獲得することは、営業効率を高め、最終的な顧客獲得率とLTVの向上に貢献します。
顧客の離脱率を示す「チャーンレート」
チャーンレートは解約率を意味し、一定期間内にサービスを解約したり利用を停止したりした顧客の割合を示す指標です。
顧客離脱率や退会率と呼ばれることもあり、契約の解約だけでなく、プランのダウングレードも含まれる場合があります。
なお、チャーンレートはSaaSやサブスクリプションサービスにおいて特に重視される指標であり、売上やLTVに直結します。
チャーンレートが低いほど顧客の継続期間が長くなり、収益の安定化やLTV向上につながるため、常にモニタリングし、サービス改善に役立てることが重要となるでしょう。
解約率を下げることは、LTVを高めるための重要なポイントの一つです。
事業の健全性を判断する「ユニットエコノミクス」
ユニットエコノミクスは、顧客一人あたりの採算性を示す指標で、事業の健全性を判断する上で非常に重要です。
LTVとCACの比率で算出され、一般的にLTVがCACの3倍以上であることが望ましいとされています。
- ユニットエコノミクス=LTV÷CAC
上記のようなROI(投資対効果)を評価する指標は、サブスクリプション型ビジネスで用いられることが珍しくありません。
具体的には、ユニットエコノミクスが3を下回る場合は、顧客獲得コストが高すぎるかLTVが低いことを示しているため、改善が必要です。
逆に、3を大きく上回る場合は、顧客獲得への投資を増やすことで、さらなる成長の機会を逃している可能性が考えられます。
LTVを向上させるための4つの具体的なアプローチ
LTVを向上させることは、顧客単価の引き上げ、購入頻度の増加、解約率の低減、そしてコストの最適化という、複数の側面から具体的な施策を講じることが重要です。
ここでは、LTVを向上させるための4つの具体的なアプローチについて詳しく解説します。
顧客一人あたりの購入単価を引き上げる
顧客一人あたりの購入単価を高めることは、LTVの向上に直結します。
具体的な方法としては、まとめ買いや大容量サイズの提供、高品質な商品の投入、ギフトやオプションの追加などにより、顧客が支払う売上額を高めることが挙げられるでしょう。
また、アップセル(上位モデルへの誘導)やクロスセル(関連商品の併売)を効果的に提案することで、顧客のニーズに合わせた付加価値を提供し、単価を高めることも可能です。
顧客の課題解決に貢献する商品を開発し、価値を伝えることで、顧客の購買意欲を刺激し、LTVを高めることが期待できるでしょう。
顧客の購入頻度を高める
顧客の購入頻度を高めることも、LTVの向上に貢献します。
購入後のアフターフォローとして、定期的なメルマガ配信や限定クーポンの配布、キャンペーンの実施などが有効です。
例えば、購入から一定期間が経過した顧客に、期限付きのクーポンを配布したり季節ごとのイベントに合わせてプロモーションしたりすることで、再購入を促すことが可能です。
CRMツールを活用し、顧客の購買履歴や行動データに基づいてパーソナライズされたアプローチを行うことで、顧客の購入サイクルを短縮し、LTVを高める仕組み作りにもつながります。
顧客との関係を維持し、解約率を低減させる
顧客との良好な関係を維持し、解約率を低減させることは重要です。
具体的には、顧客満足度を高めてサービス利用期間を延ばすことがLTVの向上につながります。
そのためには、商品やサービスの利用中に顧客が抱える課題を解決するカスタマーサポートの充実や顧客のフィードバックを積極的に取り入れたサービス改善が欠かせません。
このようにロイヤルティの高いファン顧客を育成することで、継続的な利用だけでなく、口コミによる新規顧客の獲得にもつながり、結果としてチャーンレートの低下とLTVの向上に貢献するでしょう。
顧客獲得や維持にかかるコストを最適化する
顧客獲得や維持にかかるコストを最適化することも、LTVを高める上で重要です。
単にコストを削減するという意味だけでなく、効率的な運用によって投資対効果を高めることを指します。
例えば、LTVの高さに応じて広告費用の配分を見直したり、効果の薄い広告を停止したりすることで、マーケティングコストを効率化できます。
また、SFA(SalesForceAutomation)やCRM(CustomerRelationshipManagement)システムなどのツールを導入することで、営業活動や顧客管理の業務を効率化し、新規顧客獲得コストや既存顧客維持コストの削減を目指すことも可能です。
LTV向上に役立つMA・CRMツールの活用法
最後に、LTV向上に役立つMA・CRMツールの活用法について見ていきましょう。
MAツールで見込み顧客の育成を自動化する
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、見込み顧客の情報を一元管理し、興味関心度合いに応じて自動で適切な情報を提供することで、育成プロセスを効率化します。
例えば、ウェブサイトでの行動履歴やダウンロード資料の種類に応じて、パーソナライズされたメールを自動配信したり、ウェビナーの案内を送ったりすることが可能です。
これにより、見込み顧客が次の購買ステップに進むための興味を高め、営業担当がアプローチする段階になった際には、より質の高いリードとして引き渡すことができるでしょう。
MAツールの活用は、顧客獲得の効率化と、LTVの向上に欠かせません。
CRMツールで既存顧客との関係性を強化する
CRM(顧客関係管理)ツールは、既存顧客の購買履歴、問い合わせ履歴、コミュニケーション履歴などを一元的に管理し、顧客一人ひとりの状況を理解するために活用されます。
CRMツールを用いることで、顧客のニーズや課題を正確に把握し、個別の顧客体験を最適化するための施策を立案・実行することが可能です。
例えば、顧客の利用状況に応じたアップセル・クロスセルの提案、ロイヤルティプログラムの実施、パーソナライズされたサポート提供などが挙げられます。
それにより、顧客満足度を高め、長期的な関係性を築くことで、顧客の解約率を低減し、LTVの向上を実現できるわけです。
まとめ
LTV(顧客生涯価値)は、顧客が企業にもたらす生涯にわたる利益の総額を意味し、現代のマーケティングにおいて非常に重要な指標です。
新規顧客獲得コストの高騰やサブスクリプションビジネスの増加、OnetoOneマーケティングの普及を背景に、LTVを高める戦略は企業の持続的な成長に不可欠となっています。
LTVの計算方法は複数あり、ビジネスモデルや目的に応じて使い分け、顧客単価の引き上げ、購入頻度の増加、解約率の低減、コストの最適化といった具体的な施策を実行することがLTVの向上につながるでしょう。
まずはMAツールやCRMツールを効果的に活用することで、LTVを高めるための戦略を効率的に推進し、長期的な企業価値の最大化を目指しましょう。
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