心理的安全性とは?組織のエンゲージメントを高める方法と併せて解説
2024.11.07
心理的安全性は、組織においてメンバーが自由に発言できる環境のことです。
この概念は1999年に心理学者エドモンドソンによって提唱された理論であり、多数の研究者からその重要性が明らかにされているのが特徴です。
組織メンバーが自らの意見や考えを表現することができると、コミュニケーションが円滑になり、チーム全体のエンゲージメントをアップさせられます。
心理的安全性が確保されている職場では、メンバー同士が互いに支援し合い、創造的なアイディアが生まれる可能性が出てくるでしょう。
結果的に個々の成長が促進され、組織全体の成果が向上するわけです。
この記事では心理安全性とは何か、注目される背景、低い職場での問題点、メリット、高める方法、測るための質問、高い職場作りの事例について詳しく解説します。
心理的安全性について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
INDEX
心理的安全性とは何か
心理的安全性とは、個人が自分の意見や考えを受け入れられ、尊重される状況を示します。
心理的安全性のある組織では、メンバーが恐れを感じることなく、自らのアイディアを積極的に提案したり、多種多様な意見を交わせたりするため、より効率的かつ革新的に問題を解決可能です。
チームメンバーは互いに信頼し合うことで協力する姿勢が育まれ、組織における人間関係の強化にも繋がるでしょう。
ぬるま湯的な組織との違い
ぬるま湯組織は、表面上は安定しているものの、メンバーが自由に発言できない可能性があります。
メンバー同士が仲良しで緊張感がなく、言い換えると「馴れ合い組織」とも言えるでしょう。
このような職場では個人の意見やアイディアが無視されやすく、成長の機会が制限されるなどのリスクがあり、メンバーのモチベーション低下や組織全体の活力が失われる危険性が否めません。
リラックスできる職場にもメリットはあるものの、気が緩みすぎている職場にはデメリットしかないため、ある程度の緊張感が必要です。
心理的安全性が注目される背景
心理的安全性が現在特に注目される背景には、企業環境の変化や新たな働き方の潮流があります。
特に、Googleが行った「プロジェクト・アリストテレス」は、チームの生産性における心理的安全性の重要性を示す大きなきっかけとなりました。
この研究では、エンゲージメントが高いチームは心理的安全性が高いという結果が得られ、メンバーの意見を自由に交わすことができるとわかっています。
要するに、状況が変化する中で社員の声を大切にする企業が求められているわけです。
企業は課題を解決するための工夫や施策を考え、心理的安全性を確保するための努力が必要です。
心理的安全性が効果的に作用するチームとは?
心理的安全性が効果的に作用するチームは、メンバー間の信頼関係や目的意識のレベルが高く、発言やアイディアの自由な交流が実現されていると言えるでしょう。
Googleの研究によれば、心理的安全性が高いチームでは個人の目標がチーム全体の成果に結びつくことを意味するなど、相互の信用が基本的な要素となっています。
このようなチームではメンバーの意見を尊重し合う文化が根付いており、気軽に質問や意見を述べることが可能です。
結果的にメンバーはやりがいを感じ、間違いから学ぶリスクを恐れずに挑戦しやすくなる他、チームの生産性や成果の向上が期待されると同時に目標達成に向けてのモチベーションも維持されるでしょう。
心理的安全性が低い職場での問題点
心理的安全性が低い職場では、メンバー間のコミュニケーションが遮断されやすいです。
この状況下では、意見交換や情報共有が難しいため、問題解決や業務の効率に悪影響を及ぼします。
また、心理的に不安定な環境は、離職率の上昇を招く要因にもなるなどリスクがあると言えるでしょう。
メンバーが職場で安心感を持てないと自己防衛的な行動に出るかもしれません。
結果として企業における人材の流出が加速し、優秀な人材確保も困難になります。
心理的安全性の不足はチーム全体にとって深刻な問題を引き起こすため、どのような原因で心理的安全性が低くなるのかについては知っておきたいです。
4つの不安と影響
職場における心理的安全性が低くなる要因として、主に4つの不安が指摘されているため、どのような影響があるのかについて知っておくことが必要です。
ここでは、心理的安全性を低くする4つの不安と影響について詳しく解説します。
無知だと思われることへの不安
無知だと思われることへの不安があると、新しい情報や知識について相談しにくくなります。
この不安が強い状態では必要なコミュニケーションが欠如し、自己防衛の心理が働きます。
無知が露呈することへの恐怖から質問することを避けるケースが多く見受けられ、結果的に情報の共有が進まず、業務の効率が低下してしまうわけです。
無能と思われることへの不安
無能だと思われることへの不安は、メンバーがミスを恐れるあまり、積極的なイノベーションや挑戦を避ける原因となります。
自分のスキルに自信がない人は、責任を負うことに対して過剰に警戒します。
このような不安が高まると個別の業務は停滞し、成長の機会も失われることになるでしょう。
新しい試みに果敢にも挑戦できず、安易な選択肢に流されてしまう場面が増えるためチーム全体が停滞してしまい、結果的に企業全体の競争力も低下してしまいます。
業績にも悪影響を及ぼすため、心理的な安全性を高める取り組みが必要です。
邪魔をしていると思われることへの不安
邪魔をしていると思われることへの不安は、チームワークにおいて問題を引き起こします。
仮にメンバーが邪魔だと思っていなくても、本人が邪魔をしていると思われたくないがために意見を述べることを躊躇するなどの問題が発生します。
過去に否定された経験があると部下がアイディアを発表しにくくなり、生産性の低下を引き起こすこともあるでしょう。
チーム内での意見のやり取りが減少することで情報伝達が不足し、業務の効率が低下するため、オープンなコミュニケーションができる環境を整えることが必要です。
ネガティブだと思われることへの不安
ネガティブだと思われることへの不安は、職場内での意見発表を妨げる重要な要素です。
あまりにもネガティブな人に対しては、メンバーが批判的・否定的な意見を避ける傾向にあり、ミスを指摘することや改善策を提案することが難しくなります。
結果的に組織全体の成長が阻害される結果に繋がるでしょう。
このような不安が広がると職場の雰囲気が悪化し、メンバーのエンゲージメントも低下します。
また、ネガティブなフィードバックを避けることで自己改善の機会が失われ、個人の成長に影響を与える事態が生じます。
心理的安全性が生み出すメリット
ここでは、心理的安全性が生み出すメリットについて見ていきましょう。
会社へのポジティブな影響
企業文化において心理的安全性が強化されると、会社全体にポジティブな影響が及びます。
メンバー間の人間関係が改善されることで、チームワークが向上するのが特徴です。
信頼し合える環境では、メンバーがリスクを取って新しいアイディアを提案しやすくなり、イノベーションが自然に発生します。
また、職場の雰囲気が明るくなることで、社員の満足度やモチベーションも向上し、離職率の低下にも寄与します。
業績の向上が期待できる環境は、企業にとって競争優位の源泉となり、多様な人材を引き付ける要因にもなるでしょう。
働き方改革や健康経営の需要が求められる昨今の状況を鑑みると、早めの対策を行うことで会社の業績のみならず、若手の意欲向上、果てはワークライフバランスの充実にも繋がります。
個人へのポジティブな影響
心理的安全性が高まることで、個々のメンバーにもポジティブな影響がもたらされます。
発言できる環境が整うことで、自身の目標に対する責任感が高まり、モチベーションも向上します。
メンバーは自らの意見を大切にされる実感を持つため、職場での役割に対してより積極的になれるわけです。
時としてリスクのある行動を取る必要がある場合に二の足を踏んでしまったり、面談や会議報告の場で「本当は必要性を感じているアクション」を言葉に出来なかったりといった機会損失が発生しにくくなります。
また、職場の雰囲気が良好であると、自然と傾聴する文化が醸成され他者とのコミュニケーションも円滑になるでしょう。
結果として、自分の成長を実感しやすくなり、さらなるスキルアップを志向することが可能となる他、心理的安全性が保障されることで個々のパフォーマンスも向上し、組織全体の成果にも繋がるのです。
心理的安全性を高める方法
ここでは、心理的安全性を高める方法について見ていきましょう。
チームの心理的安全性を高めるためのステップ
チームの心理的安全性を高めるためには、いくつかのステップが効果的です。
具体的なステップについては、以下のようなものがあります。
- 定期的なミーティングやワークショップを開催する
- メンバーが発言しやすい雰囲気を整える
- フィードバックの実施を促進する
- 具体的な成果や改善点を確認する
以上のステップで進めることが、組織全体の成長に寄与するでしょう。
定期的なミーティングやワークショップを開催するとメンバー同士のコミュニケーションが生まれ、よりメンバーが発言しやすい雰囲気が整います。
加えて、定期的にフィードバックの実施を促進することで、具体的な制かや改善点を確認するのがおすすめです。
マネージャーやリーダーが果たすべき役割
マネージャーやリーダーは、1on1ミーティングのフィードバックや対話の機会を設け、各個人の状況をチェックすることが効果的です。
こうすることで個別のコミュニケーションを通じて、メンバーの思いや考えを理解できます。
日本の文化においてはトップダウンの傾向が強いですが、マネージャーやリーダーはその枠にとらわれず、相互信頼の構築を目的としたミーティングの実施を意識するのが良いでしょう。
メンバーが自由に意見を持ち寄る環境を整えることで、組織全体の成長を促進する土壌が整えられるため、心理的安全性を意識したチーム作りを進めてください。
チームの心理的安全性を測るための質問
チームの心理的安全性を計測するためには、適切な調査やツールを用いたレポートを活用し、見える化することが重要です。
具体的には、心理学者エドモンドソンが提唱した方法を基に「7つの質問」を通じてチーム内の課題を明らかにするのが良いでしょう。
- チームの中でミスをしてもたいてい避難されない
- チームの中で起きている問題に対して、自由に意見を言える
- チームのメンバーは、自分と考えが異なることを理由に、他社を拒絶するようなことはない
- チームにとってリスクのあるチャレンジが許容されている
- チームの他のメンバーに助けを求めることは容易である
- チームメンバーは誰も、他人の仕事を意図的に咎めるような行動はしない
- チームメンバーと一緒に仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる
これらの質問はメンバーの意見や感情を引き出し、心理的安全性の評価を行う手助けとなります。
質問を通して得られるフィードバックを分析することで、チームの心理状態を測定し、必要な改善策を講じることが可能です。
心理的安全性が高い職場環境を構築するためには、定期的にエドモンドソンが提唱した質問を行い、メンバーの信頼関係を深めましょう。
心理的安全性が高い職場作りの事例
心理的安全性が高い職場を構築するための事例は、多種多様です。
例えば、あるIT企業では定期的にチームワークを強化するためのワークショップを開催しています。
こうした取り組みによりメンバー間の信頼関係が深まり、業務におけるコミュニケーションが円滑となるわけです。
同社では、メンタルヘルスも重視しており、専門のカウンセラーが定期的に相談会を開く取り組みも実施しています。
結果として、メンバーがストレスを軽減できる環境が整えられ、心身ともに健康的な状態を保つことができるでしょう。
また、成功体験や失敗談をオープンに共有する文化を育むことで、メンバーは安心して意見を述べ合い、心理的な安全を享受することが可能です。
こうした事例は、組織全体の生産性向上にも寄与し、長期的な成長を促進する要因ともなります。
退職者の増加に課題を感じている場合、チームビルディングやマネジメントの一環として取り入れることで離職防止に一定の効果を発揮するでしょう。
まとめ:心理的安全性を高めてエンゲージメントの向上を目指そう
心理的安全性を高めることは、組織全体のエンゲージメント向上に繋がります。
メンバーが安心して意見を表現できる環境が整うことで、コミュニケーションが活発化し、チームワークが強化されます。
結果的に各個人が自分の役割を実感しやすくなり、目標に対するモチベーションも高まる他、新しいアイディアや挑戦が生まれやすくなるわけです。
イノベーションも促進され、企業の成長にも寄与します。
心理的安全性が保証された職場は、メンバーのメンタルヘルスの向上にも寄与し、ストレスを軽減する効果も期待できるでしょう。
企業が持続的な成長を目指すなら、こうした取り組みを継続的に行い、社員全体のエンゲージメントを高める努力を続けることが大切です。